英語学習の根底にあるたった1つの概念

1.イントロダクション


私は、2018年7月から英語学習を始めました。あらゆる勉強方法を試した結果、英語学習の本質はある一つの概念に紐づいていると感じました。それは、「意識の無意識化」です。意識の無意識化とは、『ある行動を意識的に“体得”しようとすることで、意識せずに(無意識的に)その行動ができるようになること』です。例えば、子供の頃、自転車に乗るために必死に練習をした経験をお持ちの方は多いと思います。最初は色々と考えて工夫して、試して失敗して、を繰り返しながら、最終的に乗れるようになります。その後はもう、自転車の乗り方を意識する必要はなく、無意識的に自転車に乗れるようになります。その他にも日常生活で無意識にできていること、通勤電車の利用やナイフとフォークの使い方なども同様に、“意識の無意識化”ができている事例です。『英語は勉強』という意識があるので、“知識を使えるようにする”ことに意識がいきがちですが、実は違ったのです。今回は私のこの気づきをシェアしたいと思います。

そして、このテーマを扱うにあたり、

①文法学習には意味があるのか

TOEICに意味はあるのか

③発音は気にする必要があるのか

の3点についても触れていきます。

 

2.自己紹介


申し遅れました。KoboLと申します。私は都内で仕事をしている29歳の会社員です。月~金曜日の日中の勤務で、休日祝日は暦通りです。(仕事スタイルに合わせた勉強時間の捻出方法などは、今回割愛させていただきます。)

学生時代から英語は大の苦手科目でした(大学入試センター試験は5割程度)。しかし、2018年7月にTOEICを受験し、そこで400点を取ってしまったところから私の英語学習に火がつきました。約1年間TOEICの勉強に励み、2019年6月に775点(L465/R310)を取ったあとは、英会話に重点を置くようになりました。現在は、日本に住んでいるネイティブと1日2時間程度、週3日会話をする生活を送っています

これまでに取り組んだテキストは、TOEIC向け英単語帳2冊、文法書1冊、TOEIC対策本6冊ほど、TOEIC公式問題集4冊、英会話関連の参考書2冊、勉強法などに関する本8冊ほど、etc.

あらゆる勉強方法を試した結果、効果的だったと感じるものは全て、「意識の無意識化」を助けるものでした。ではここからは、具体的な内容をシェアしていきたいと思います。

 


3.脳の機能を理解する


まずは『脳の処理スペースは意外と狭い』という感覚をシェアしたいと思っています。全ての気づきはこの概念に基づきます。簡単に説明すると、『脳は一度に複数のことを考えられない』ということです。

この感覚を体験していただきたいので、よかったら次のワークを試してみてください。それは、「自分が何かをしているシーンを、同時に3つ想像すること」です。

例えば私の場合、

a)英語で海外の人たちと楽しそうに会話しているシーン

b)バスケでいいプレーをしているシーン

c)ステージに立って人前で歌っているシーン

これらを同時に想像することはかなり難しく、どれかに集中すると、どれかが疎かになってしまいます。人間の脳は3つ以上のことになると、同時に考えることは難しいのです。

試していただいた方、ありがとうございます。いかがでしたでしょうか?

この、『脳の処理スペースは意外と狭い』という脳の特性を理解することが、英語学習においてとても大切です。では実際に、英語について考えていきましょう。

 

4.英語を話している時の脳内分析

 


いきなりですが、具体例から話していきましょう。

例えば、『Our reservations can be done through our Web site. Please check it out!』と相手が言ったとします。英語を学び始めた頃の私の脳内で何が起こりうるか想像してみました。

 


→reservationsって何だっけ?…あ!確か、”予約”って意味だったな…

→be doneってことは、受動態の文章か…

→“チェキラウ”って何だろう… ああ、この前単語帳で見て覚えたcheck it outのことかな…

 


このように、脳内では“会話とは無関係の処理”が多く行われます。すると、肝心の『相手は何を伝えたいのか』『自分は何て伝えようか』という、会話そのものを考える余裕がなくなってしまうのです。前述した、脳の処理スペースが、単語や文法、発音を処理することに使われてしまっている状態です。

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ここで重要なことは、『知識を理解していても脳の処理は行われてしまう』ことです。先ほどの私の脳内で起きていた単語、文法、発音に関する処理は、全て“勉強して暗記・理解していたもの”でした。しかし、無意識化されるレベルまで体得できていないため、会話そのものに集中する処理スペースは確保できていないのです。英語学習は、知識は増やすことも非常に重要ですが、「知識を脳から引き出せるようにするだけでは未完成であり、知識を無意識的に処理できるレベルまで体に覚え込ませる」必要があります。

単語、文法、発音を無意識的に行うことができるようになれば、以下のように、会話に集中できるようになります。きっと日本語を話している時は、みなさんもこのようなシンプルな脳内処理を行っているのではないでしょうか。

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ここまでの内容を踏まえて、結論です。

英語ができるということは、「単語、文法、発音を“無意識的”に聞き取ることができ、“無意識的”に話すことができる状態」です。そして効率的な勉強法とは、『単語、文法、発音の無意識化を助けるもの』と言えます。無意識化を実現するためには、まずは意識的に反復して取り組む必要があります。そこが英語学習の根気が必要な部分であり、挫折ポイントなのです。

具体的なオススメ勉強法などは、今回の記事では割愛させていただきますが、多くの方が独自の勉強法をシェアしてくださっています。自分にフィットする学習方法がどれかわからないとお悩みの方は、ぜひ『意識の無意識化』に繋がる勉強法かどうかを、一つの勉強方法採用基準として加えていただけたら幸いです。

 


次は、私が勉強する過程で耳にした英語学習に関する巷の話題について、意識の無意識化の観点から、考え方をシェアしたいと思います。

 

5.文法学習に意味があるのか


「文法は学ばなくてもいい。だって、日本語で会話する時には文法を意識していないでしょ?」

この話を聞いた昔の私は、とても困惑しました。確かに、すごく説得力のある理屈です。

しかし、ここまで読んでいただいた方には、すでにご理解いただけるのではないでしょうか。そうです、私たちは、日本語会話で文法は意識していないけれど、“無意識的”に正しい文法を使っています(私は日本語会話もあまり得意ではないので自信を持って言えませんが…)。

重要な点は、『文法の無意識化を達成する方法は、文法書を勉強することだけではない』ということです。人によっては、実際に会話をすることで、もしくは洋楽を聴いたり洋画を見たり、洋書を読んだりすることで、より実践的・感覚的に文法を体得する方もいらっしゃいます。

私は、文法書をがっつり勉強してきたタイプですが、ゴールは一緒なのです。文法の必要性の議論と、文法の体得法の議論が混在してしまわないように気をつけましょう。

 

6.TOEIC L&Rは意味があるのか


TOEICは実用的ではないから意味がない」という意見もよく耳にします。確かに、TOEICを頑張り続けても実務で役に立つとは言い切れませんよね。

TOEIC L&R(以下TOEICと表記します。)は、リスニングとリーディングの能力を測るものです。よって、スピーキング(何を話すか)を考える必要がありません。その代わりに、マークシートに回答を記入したり、時間配分を考えたり、問題を先読みしたりといった、会話とはまた違った作業を行います。英語学習初期段階では、TOEICを受験している時の脳内は以下のようになっているのではないでしょうか。

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左半分は、先ほどの会話における脳の処理と似ています。右半分は、会話の時とは異なり、テストを解くことに集中しています。ここまでで、英語力の向上には「単語、文法、発音の無意識化」が重要ということをシェアしてきました。もちろんその無意識化によってTOEICスコアはアップします

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しかし、スコアをアップさせるには裏技があります。それは、『試験そのものに慣れ、テクニックを掴む』ことです(図の黄色の部分を小さくするイメージ)。例えば、Part2では、“設問と似た音を選択肢に盛り込んで引っ掛け選択肢として用意している。”といった解法テクニックはスコアにもちろん反映されますが、英語力の向上とは言えません。脳内は以下のような状態と言えます。

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個人的な感覚ですが、単語、文法、発音の無意識化ができていなくても、そこそこの知識を蓄えてテクニックを磨けば、TOEICで650点くらいは取れると思います。もちろん、スコアアップの喜びを重視する方は、どんな手段を使っても良いのですが、実用的な英語を学びたいと思っている方(私はそうです)は、テクニックではなく、本質的な英語力の向上によってスコアアップを目指していきたいですね

TOEICに対する目的・モチベーションは人それぞれです。そこに“実用性“を持たせるかどうかも人それぞれかなと思います。自分が何を目指して勉強しているかによって、変わってくるのではないでしょうか。

 

 

7.発音は気にしなくて良いのか


「日本人なら日本人らしい発音で会話すればいい。他国の人たちも、母国語の訛りが残る英語で堂々と会話しているのだから。」という話もよく聞きます。“発音の必要性”に関しては、リスニングとスピーキングで考え方が少し異なるのですが、まずは、発音の概念についてシェアします。

人間はある言葉を聞いた時、自分の脳内で『その音に似た自分の知っている言葉』を探し、検索をかけます。日本語でも同様です。話し手が“りんご”という言葉を発音する時、誰一人として同じ発音をしていません。滑舌や声質、イントネーションや音域など、全員が常に違う“りんご”を発音しています。しかし、聞き手がそれを全て“りんご”と解釈できるのは、自分の脳内で"似た音の知っている言葉"を検索しているからなのです。(母国語の場合、そのことが無意識化されているため気づきにくいのです。)

 


自分が聞き手(リスニング)の場合、この検索作業が複雑な場合は脳の処理スペースを多く奪ってしまいます。例えば、”an apple”を”アン アップル“と認識している場合は、脳内検索に時間がかかってしまいます(前述の”チェキラウ“の例と同様ですね)。”an apple”を”アナポウ“という発音として認識できていれば、検索の時間は相当短くなっていきます。そして最終的に”an apple”がそのまま無意識に聞き取れるようになれば、ネイティブです(an appleに関しては…)。このように、リスニングにおいては発音を学ぶことはとても重要です。

 


では自分が話し手(スピーキング)の場合はどうでしょう。実際のところ、ネイティブの皆さんは日本語訛りの英語をかなり聞き取ってくれます(少なくとも、日本在住の外国の方々は)。彼らの素晴らしいリスニング能力を借りてはいますが、スピーキングの際、自分の発音の良し悪しは、あまり気にする必要がないかもしれません。しかし、ここでも脳の処理スペースについて考えてみましょう。自分の意識の中で、『“この発音で大丈夫かな?”と心配している状態』は、脳の処理スペースを奪ってしまいますスピーキング時の発音を無意識化する方法は、“日本語訛りでも通じるので、意識せずどんどん話す”か、“日本語訛りでも通じるけれど、心配(意識)しなくていいほどのレベルまではトレーニングしておく”のどちらかだと思います。私は後者ですが、前者の方がより多くの会話経験を積むことができるという利点もあります。重要なのは自分の発音スキルそのものではなく、自分が“無意識に発音できるかどうか”です。自分の性格に合わせて、発音を無意識化する勉強法を探していきたいですね。

 


いかがでしたでしょうか。これが、私が1年間英語を学んできて気づいたことです。

皆様の英語学習の後押しとなるような情報が1つでもあったなら、幸いです。

 


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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